離れていても

気持ちは同じ、だと思う。



確かめようがないから
所詮、だったらいいなーなんだけどね。







さよならの言葉 4







カカシ率いる第七班は、この日も与えられた任務をこなし
今は昼食を兼ねた休憩をとっているところだった。


指導者として、上司としてこの班を束ねる上忍であるカカシは
最早そのほとんどが頭に入っているであろうに、その辺の木に寄りかかりながらも
お気に入りのイチャパラシリーズの内の1冊を手にして、
少し離れたところにいる騒がしい部下たちを視界から一応はずさないようにしている。


あーあ、誰かアイツらに休憩の意味を教えてやって欲しいもんだね。


本来ならばそれはカカシのやるべきことなのだが、そこは
ま、ちゃんとする所でちゃんとしてくれれば問題ないでしょ。・・・ていうか、メンドーだしな。

というのがカカシの方針らしい。


上が上なら下も下。

やるときはとことんやる。
オンオフが激しいのがこの第七班の特徴として、誰もが徐々にその存在を受け入れていた。



がいなくなってから、その生活に慣れないまでもなんとか受け入れられるようにはなってきている。

初めのうちはいつが戻ってきてもいいように、と自宅待機をさせていたムサシも
任務には関わることはないにしろ、今では班に同行していた。


比較的穏やかな午後の昼下がり。

カカシの少し柔らかい、細い銀色の髪をゆらす風はからかうように間を通り過ぎてゆく。



「ここにさぁーの膝枕があればイイと思わない?」


隣で前足をあごの下に引き、ゆっくりと己の時間をすごすムサシは
少しめんどくさそうに、閉じていた目蓋をあげて答える。


「・・・・帰ってきたらしてもらえ。」

「えー・・・今がいーんだけど。」


それこそいなくなってすぐの頃は、の話題にすら触れようともしなかったが
今ではこうして自らの口での名を語ることが出来るようにまでなった。

だからムサシも無茶言うな、とは言いたくても言えず。


「あーあ。はーやくつくったご飯がくいたい。」


のんびりと、はやくその時がくるようにとの願いもこめて呟くと

視界の端に入れていたナルトとサスケのじゃれ合いに
そろそろ教育的指導が必要かもしれない、とカカシがため息をついたその時


先にムサシが反応し、遅れてカカシもその気配を悟った。



「暗部がオレになんの用?こーんな時に火影から伝令ってのはナシでしょ。」



カカシは少し離れたところで気づかずに騒いでいる部下たちに、視線をむけたまま声をかけた。
しかし突然現れたままなんの反応も見せずに、気配を絶っている。


そこだけが薄ら寒いような

猫の面をつけている暗部は、どこかカカシを煽るような雰囲気を持っていた。


軽い挑発してくれちゃって。
ま、じゃあー少しだけご期待に応えますか。




「なーに?今どきの暗部じゃ上下関係もろくに教えてくれないワケ?」




背後に向けて軽く殺気を放った。

カカシの反応に、ピクリと少し動いた暗部をみて
ようやくムサシが隠された素顔を見破った。



「お前・・・・テンゾウか・・・?」


ムサシが口にした名前に、カカシは思わずその身を反転させて
自分の目で直接確認する。

驚く表情を浮かべるカカシに、テンゾウ、と呼ばれた人物は
面を外しながら、ようやく声を発した。




「その冷たい殺気・・・・噂は本当みたいですね、カカシ先輩。」




どれだけぶりかに聞いたその声、その姿。

暗部を抜けてから1度も会わなかったが、不思議と懐かしいとは思わない。



「テンゾウ・・・オマエ・・・オレになんの用だ?」

「いえ、たいした事はないんですよ。」


たいした事ではない、と言って笑うその瞳が笑えていない。
ますますカカシはテンゾウに対しての警戒を強めた。


「・・・・元気にしてたか?」

「ええ、先輩がいなくなってからの暗部は退屈ですけどね。」

「そうか。それで?くだらない世間話をしにきたワケじゃないでしょ。」


「カカシ先輩・・・・女が出来たそうですね。」


テンゾウの言葉に、すかさずムサシが反応した。

「テンゾウ、そういえば前にの枕元に現れたな。理由はなんだったんだ。」

「なに?オマエ、・・・どういうつもりだ。」

静かに怒りをためていくカカシの様子は、
相手がテンゾウでなければみなとっくに逃げ出しているほど、抑えられない殺気がその身から滲み出ていた。





「簡単な事だよ、ムサシ。先輩、ボクはその女が邪魔なんですよ。」





取り繕っていた笑顔をやめて、
その大きな真っ黒い瞳をまっすぐにカカシに向ける。


「その女がいなくなったと聞いて・・・いい機会だと思ったのでボクからも意見を言わせてもらおうかと。」


「・・・なにが言いたい?」


「どうです?これを機に女に執着するなんて馬鹿げたことやめませんか。
 1人の女を想っていつまでも待ってる、なんて先輩にはそんなの似合いませんよ。」


「似合う似合わないの問題じゃないでしょーよ。オレはオレの意思でを待ってる。
 それにオレは暗部を抜けた、あの頃から時間は進んで護りたいモノも人もたくさん出来た。」
 
 
はっきりと断言するカカシにテンゾウは確認するように、
小さく自分だけに聞こえるようにわかってない、と呟いた。



「ボクは鋭くて、冷たくて・・・・色んな事を諦めて木の葉の為だけに生きていたあの頃の先輩に戻って欲しいんです。

 人間くさいカカシ先輩なんて変ですよ、なに落ち着いちゃってるんです?」


「オマエ・・・・なに勝手なこと言ってんの?」

「先輩言ってたじゃないですか。誰かに執着するのはもう疲れたって、結局は置いてかれるんだって。」


昔そう言ったコトは覚えている。
確かにテンゾウにそう言ったのは自分だ。



だけど、幼くて

失うコトに怯えながら、いらないと斬り捨てて戦っていた日々はもう終わった。



「別に暗部をどうこう言うつもりもないし、確かにあの頃のオレはそう思ってた。」

「だったら、」

「けどな、テンゾウ。オマエがそこにいる限り、

 どうしてオレがを必要としていて命かけて護りたいと思ってるかなんてわかんないよ。」





「少なくとも、を愛するコトが馬鹿げてるだなんて・・・これから先、たとえその所為で死んだって思えないね。」





と出逢ったあの日から。

確かだったオレの当たり前が少しずつ崩れて、新しい形を色鮮やかにかたどっていった。



「正直、今の先輩にはがっかりです。こんなかっこ悪い姿・・・・予想以上だ。
 まぁでもボクは諦めてませんから。いい機会なのに変わりはありませんしね。」



不服そうにしていたが、それだけ言うと瞬身の術でカカシとムサシの前から消えていった。



「なんだったの?アイツ。」

「・・・・さぁ。」


「っていうかさー・・・・テンゾウがと接触したことあるなんてオレ初耳なんだけど?」


げ、ヤバイ。


「い、いや・・・それはだな。あの後、の失踪事件があって言いそびれたというか・・・そ、そのだな。」

冷や汗をかきながら必死で取り繕うムサシに、
先ほどのテンゾウの言動を八つ当たりしてもしかたがない、と思い直しその場はなんとか抑えることにした。


その視線が外れたことにムサシは隠れてホッと肩を撫で下ろす。



納得出来ない気持ちをなんとか切りかえて、その後カカシは第七班としての任務を再開させた。










『先輩、どうして女1人にそんなに固執するんです?いいじゃないですか、この際忘れてしまえば。』


忘れるなんて出来ない。

出来るワケがない。




「テンゾウのばーか、超巨大なお世話だってーの。ま、術かけられたって意地でも忘れないけどね。」




ましてや想い出になんてしたくもないのに。

夢ならいいよ、目覚めた時に少しだけ切ない気持ちに浸っていればそれでいいから。



確かにはいたんだ。



一緒に笑ってオレの代わりにたくさん泣いて

嫉妬して怒るのはいつもオレで。



自分でも忘れていた、ホントのオレを記憶の奥底から見つけてくれた。
は、その全てでアイの意味を教えてくれる。


カカシは次々と溢れてくる己の気持ちを、
この時ばかりはそのままにしていた。

自分が触れると、なにかしらいつも反応していたの姿を思い出す。



この手で触れたいのはただ一人。
ねぇ、元気にしてる?



今すぐこの瞬間も、ずっと






「・・・・・・に逢いたいよ。・・・・・・」






カカシは、無駄だとわかっていても初めてと出逢ったこの場所で

繰り返し
・・・何度も何度も、口寄せの術を行うことをやめられずにいる。



待つのってツライんだなぁ。



「ムサシー。」

「なんだ?」



止めもせず、かといって勧めるワケでもなく

ただ少し離れた所で、黙ってオレの状態を見ているだけのムサシの名前を呼ぶ。




「オレが任務の時のも今のオレみたいなカンジなの?」

「あー・・・・・まぁ、いつも辛そうにはしてるな。」

「・・・・そっか。」



の言葉を信じて今日もカカシはが戻ってくるのを待っていた。
一緒にすごした季節を、1人追いかけながら。











次回で終わる・・・はず。
この話が終わったら今度こそアホみたいな、イチャイチャ話かくんだい!

あー・・・・・それにしてもなんだかキャラたちが迷子・・・・。
テンゾウさんなんて、苦情がでそうなほど色んなもんが捻じ曲げられてますよね。
すみません(汗
ますます特徴つかめてない気がしてワタクシ自身迷子中でーす。・・・・ヤバイ。